【医師監修】乳腺炎で母乳外来・助産院に行くと何をする?|聞かれること・見られるところ・赤ちゃんの診察まで、ガイドラインの流れ

【医師監修】乳腺炎で母乳外来・助産院に行くと何をする?|聞かれること・見られるところ・赤ちゃんの診察まで、ガイドラインの流れ(母乳ナビ・医師監修)

乳腺炎かもしれないと思って母乳外来や助産院に電話をしたものの、「行ったら何をされるんだろう」「胸を強く押されるのでは」「授乳のやり方を責められたらどうしよう」と、受診をためらう方は少なくありません。日本助産師会『乳腺炎ケアガイドライン2020』には、助産師が乳腺炎の相談を受けたときに何を聞き、どこを見て、どう触れるかが項目ごとに書かれています。この記事では、その流れをお母さんの側から読める形にまとめました。

先に結論です。乳腺炎の相談では、①問診(話を聞く)→②視診(見る)→③触診(触れる)→④赤ちゃんの診察の順に情報が集められ、そのうえで「助産師のケアと家でのセルフケアで様子を見るか」「医療機関の受診を勧めるか」が判断されます。ガイドラインは、目的と手順を説明して同意を得てから行うこと、責められていると感じさせる言い方をしないことを助産師に求めています。受診前に「いつから・どこが・どんなふうに」をメモしておくと、話が早く進みます。

相談の流れ:問診・視診・触診、そして赤ちゃん

ガイドラインは、情報収集の進め方を次のように書いています。

助産師は、妊産婦の診察と同様、問診・視診・触診によって情報を収集する。

これに赤ちゃんの健康診査が加わり、集めた情報をお母さんと一緒に整理しながら、このまま助産師のケアとセルフケアで経過をみられるのか、医療機関との連携が必要なのか、見通しを立てます。始める前の約束ごととして、ガイドラインは助産師に次のことを求めています。

これからおこなう問診、視診、触診、児の健康診査について目的と手順について説明し、同意のもとに行う。

専門用語をできるだけ避け、母親が理解できる言葉を用いる。

何をするのか分からないまま進むことはない、というのが前提です。分からない言葉が出てきたら、その場で聞き返して大丈夫です。

① 問診:聞かれること

問診は、施設ごとの問診票や母乳外来のカルテに沿って進みます。ガイドラインには「母子健康手帳からも情報を得る。」とあるので、母子健康手帳は必ず持参してください。聞き方については次のように書かれています。

初めに、母親が自由に話すストーリーを遮らずに聞く。

うまく説明しようとしなくて大丈夫です。気になっていることを、思いつく順に話すところから始まります。熱が高くてつらいときには、次の配慮も書かれています。

消耗の著しい母親の場合、安静をはかりながら短時間で必要不可欠な情報を収集する。

ガイドラインの問診項目は、大きく4つのグループに分かれています。

今回の妊娠・出産と、これまでの授乳

  • 入院中と退院後の授乳の様子(授乳を始めた時期、乳頭の傷、張りや直接授乳の難しさがあったか)
  • 2人目以降なら、前の子のときの授乳期間やトラブルの経験
  • 持病、感染症、治療中の病気、アレルギー
  • 胸の手術歴(しこりの摘出、膿の切開、豊胸手術、乳頭の手術など)

こうした項目を聞く理由も、ガイドラインに添えられています。「初産婦の方が乳腺炎発症率が高い」「前回、乳腺炎を経験した経産婦の発症率は高くなる」、そして「糖尿病の母親は、皮膚損傷から細菌や真菌が感染しやすく」という記載です。なりやすさに関わる背景は乳腺炎になりやすい人はいる?で詳しく説明しています。

今の症状

  • 熱の出方、寒気やふるえ、頭痛、吐き気、だるさ、関節の痛み、肩こり——と、それぞれいつから始まったか
  • 乳房の痛みを感じ始めた時期、場所、強さ、表面か奥か、乳頭まで響くか、授乳と関係があるか
  • これまでに受けた治療、飲んだ薬、家でしているケア

「いつから」は特に大切です。乳腺炎は症状が出てからの時間で状態を見立てるため、始まりがずれて伝わると実際より軽く扱われることがあります(乳腺炎が長引く・こじれるのはなぜ?)。

今の授乳の様子

  • 1日の授乳回数、間隔、1回の時間、夜の授乳があるか
  • 搾乳しているなら、方法・回数・量、搾乳器の使い方と手入れ
  • 人工乳などを足しているなら、種類・回数・量・タイミング
  • 乳房がおかしくなる直前に授乳のしかたが変わったか、痛い側の授乳を止めているか、その理由
  • ニップルシールドやおしゃぶりを使っているか
  • 授乳中の赤ちゃんの様子(機嫌、すぐに離す、体の動かし方)
  • 母乳育児を続けたいか、やめ時をどう考えているか

最後の項目は、答えを評価するための質問ではありません。続けたいのか、やめることも考えているのかで、その後の支援の組み立てが変わるから聞かれます。授乳をやめたい気持ちがあるときは乳腺炎で授乳をやめたくなったときも参考にしてください。

また、ガイドラインには次の注意書きもあります。

順調に母乳育児されていた児が、突然片側の乳房から飲まなくなる、ということが乳がん発見のきっかけとなることがある

「急に片方だけ飲まなくなった」は、ささいなことに思えても伝えてください。

家族と生活

  • 食事、睡眠、仕事と復職の予定、保育園、家族の人数と健康状態、手伝ってくれる人がいるか
  • 最近の出来事(里帰り、お宮参り、旅行、引っ越し、家族の行事など)
  • 乳房が圧迫されるようなこと(タイトな下着の着用、シートベルト等の長時間の乳房への圧迫 など)

生活のことまで聞かれるのは、疲れやストレス、乳房への圧迫が乳腺炎のきっかけになりうるからです。

② 視診:見られるところ

視診では、お母さんの全身の様子(顔色、疲れ具合、話し方)、乳房、そして授乳の様子が観察されます。乳房については、次の方法が示されています。

乳房の視診を行うときは、患側乳房だけでなく、健側乳房との比較も行うと症状が明確になる。

痛くない側の胸も見られるのは、左右を比べるためです。見るポイントは、赤みの大きさ・場所・形・色、しこり、むくみ、乳頭と乳輪の状態(傷、かさぶた、白い点、水ぶくれ)、乳汁の色や出方などです。ガイドラインには、乳腺炎の赤みの特徴として次のような記載があります。

乳腺炎時に現れる発赤は、左右どちらかの乳房の一部分にくさび形に現れることが多い

好発部位は、乳頭を中心に4分割すると外側上部が最も頻度が高い。

また、「リンパの走行に添って腋窩に向かって赤いスジが伸びていることもある」とされています。わきの方へ伸びる赤い線に気づいたら、それも伝えてください。

乳汁に血が混じる場合については、産後早い時期には異常ではないこともある一方で、「母乳量が増えたあと何日も持続する場合は受診を勧める」とあります。さらに次の記載があります。

ひとつの乳管口から血性の分泌物があり持続する場合は、乳がんの可能性もあるため、専門医の受診を勧める。

乳腺炎と乳がんの見分けについてはその乳房の赤み、本当に乳腺炎?で説明しています。

可能であれば、実際に赤ちゃんに飲ませているところも見てもらいます。抱き方や飲ませ方、授乳の前後で乳頭の形がつぶれていないか、赤ちゃんがどのくらい飲めているかから、多くのことが分かるからです。授乳前後に赤ちゃんの体重を量ることもありますが、ガイドラインは次のように念を押しています。

哺乳量測定は、児の摂取量であり、分泌量を測定しているのではない

その1回で飲んだ量が少なくても、「母乳が足りない」という意味にはなりません。

③ 触診:触れられるところ

「痛いところをぐいぐい押されるのでは」という心配は多いのですが、ガイドラインの触診の方法は、それとは反対の書き方をしています。

痛みをあたえることがないよう、温かい手でやさしく触れる。

最初に母親が痛みや違和感を感じている部位を、自身で触れて示してもらうとよい。

強い痛みがある場合は、触れないほうがよいこともある。

触診も、同意を得て、プライバシーが守られる場所で行うとされています。痛い側だけでなく反対側も触れて比べ、わきの下のリンパの腫れも確かめます。しこりがあれば、場所・大きさ・硬さ・形・動くかどうか・押して痛いか、ぶよぶよした感じ(波動感)があるかを確かめ、大きさはメジャーなどで測って経過を記録します。次の受診で「前より小さくなったか」を比べるためです。

触診には限界があることも、ガイドラインははっきり書いています。

触診で乳がんを発見できるのは、1㎝大以上の大きさである。

授乳中は乳腺が発達していて、触っただけでは分かりにくく、小さなものは超音波検査が必要になります。一方で、次の記載もあります。

妊娠中と授乳中の乳房にある触知可能なしこりのほとんどは良性であるが、その3%に悪性と診断されるものがある

乳がんなど疼痛を伴わない場合、母親はしこりの存在を自覚していないことが多い。

しこりのほとんどは乳腺炎や乳汁のうっ滞によるものですが、痛くないしこり、授乳しても小さくならないしこりに気づいたら、それも伝えてください。

④ 赤ちゃんの診察

乳腺炎はお母さんの病気ですが、赤ちゃんの飲み方と深く関わるため、赤ちゃんも診ます。体重・身長・頭囲などを測り、全身の様子、生活リズム、おしっこやうんちの様子、お母さんが乳腺炎になってからの変化を確かめます。

口の中も見られます。ガイドラインの項目は次の通りです。

口蓋の形状、舌の大きさ、厚さ、舌小帯、上唇小帯、舌の前方突出の程度

歯の生え具合や、口の中に症状が出る病気(鵞口瘡など)がないかも確かめます。乳頭の痛みと赤ちゃんの口の関係は授乳のたびに乳頭が痛いときでも触れています。

赤ちゃんを連れて行けない日でも相談はできます。ガイドラインには「児が来所していない場合は、母親または家族から児の様子を聞く。」とあります。また、上の年齢の子どもへの授乳について、次の記載があります。

授乳中の児が、2才かそれ以上の年齢である場合でも、乳腺炎改善のために授乳を継続することが推奨されている。

「もう大きいから」と、乳腺炎をきっかけに急にやめる必要はありません。

乳汁がたまりやすくなる時期

赤ちゃんの診察の項には、乳汁のうっ滞が起きやすい時期がコラムとしてまとめられています。思い当たるものがあれば、問診のときに伝えると原因の見当がつきやすくなります。

  • 頻回授乳をしていた時期から、夜間長時間眠るようになる時期
  • 周りに興味が出て、授乳に集中できない時期
  • 離乳食(補完食)が始まって、授乳が減る時期
  • 急に飲まなくなる「母乳ストライキ」
  • 歯が生えてきて、乳頭を噛まれて傷ができた
  • 保育園に通い始めて、授乳回数が減った
  • 卒乳に向けて、授乳回数を意図的に減らした

授乳の間隔が変わる時期の考え方は授乳の間隔があくと乳腺炎になる?、卒乳・断乳の進め方は卒乳・断乳のときの乳腺炎・張りを防ぐ進め方にあります。

「責められる場」ではありません

「脂っこいものを食べたからでは」「授乳をさぼったからでは」と、自分を責めながら受診する方は多いものです。ガイドラインは、情報収集にあたっての助産師の心得として、次のように書いています。

相手が責められていると感じるような言動や、良し悪しの評価をしたり、否定的な言葉を使わないようにする。

悪い例として挙げられているのが、「あなたが○○を食べたから乳腺炎になった」という言い方です。問診で生活のことまで細かく聞くのは、原因を突き止めて責めるためではなく、次に同じことが起きないよう、予防策を一緒に考えるためです。食べ物と乳腺炎の関係については乳腺炎は食べ物のせい?で、ガイドラインの結論を紹介しています。

診察のあと:行き先は3つに分かれる

問診・視診・触診で集めた情報から、ガイドラインの鑑別の流れでは、おおまかに次のように分かれます。

  • 熱などの全身症状があるが、乳房に症状がない:風邪、尿路の感染、産後早い時期なら子宮の感染など、乳腺炎以外の病気を考えて医療機関の受診を勧める
  • 熱はないが、乳房に症状がある:張りや乳管の詰まりによるうっ滞なら助産師のケアへ。乳がんなどが否定できないしこり、長引くしこりは専門医の受診を勧める
  • 全身症状があり、乳房にも症状がある:乳腺炎・膿瘍の可能性として、フローチャートに沿ったケアと医療との連携へ

1つ目について、ガイドラインは次のように書いています。

発熱はあるが、乳房に症状が無い場合は、乳腺炎以外の疾患を疑い、医療機関への受診を勧める。

発熱時、検査や治療中の授乳は、ほとんどの場合継続は可能である。

産後の熱で確かめたい場所は産後の発熱は乳腺炎とは限らないにまとめています。2つ目については、「早期の授乳期乳がんは、痛みや炎症症状がないことが多い。」という記載もあります。うっ滞と感染の違いはうっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎の違いを参照してください。

助産師のケアとセルフケアで様子を見ることになった場合も、それで終わりではありません。ガイドラインは次のように書いています。

翌日または数日のうちに、症状が軽減し母乳育児が継続できているかの評価を行う。

次にいつ連絡するか、どうなったら早めに連絡するかを、帰る前に確認しておくと安心です。助産師による乳房のケアの中身と保険の扱いは助産師の乳房マッサージは受けたほうがいい?で説明しています。

受診前に準備しておくと話が早いこと

問診の項目を裏返すと、準備しておくとよいことが見えてきます。

  • 母子健康手帳(持っていく)
  • 最初に「おかしい」と感じた日時と、熱・寒気・頭痛・関節の痛みがそれぞれいつからか
  • 痛む場所(左右、乳頭から見てどのあたりか)と、赤み・しこりの大きさの変化
  • ここ数日の授乳回数・間隔、人工乳を足した回数、搾乳の有無
  • これまでに受診した場所、受けたケア、飲んだ薬(お薬手帳)
  • 胸の手術歴、持病
  • 最近の生活の変化(夜よく眠るようになった、離乳食を始めた、保育園に入った、行事や旅行があった)
  • 母乳育児を続けたいか、やめることも考えているか

電話で伝えることと持ち物は乳腺炎で受診する前に、どこに相談するかは乳腺炎はどこを受診する?で整理しています。高い熱や寒気でふるえる、ぐったりして水分がとれないといったときは、助産院ではなく医療機関へ。夜間や休日に迷ったら夜間・休日に乳腺炎になったらを参照してください。

まとめ

  • 乳腺炎の相談は問診→視診→触診→赤ちゃんの診察の順。目的と手順の説明と同意のもとで行われる
  • 問診では症状がいつから始まったか、授乳の様子、胸の手術歴、生活の変化まで聞かれる。母子健康手帳を持参する
  • 視診では左右の乳房を比べる。くさび形の赤み、わきへ伸びる赤いスジ、続く血の混じった乳汁は伝える
  • 触診は温かい手でやさしく。痛い場所は自分で示してよく、強く痛むときは触れないこともある
  • 赤ちゃんは体重と口の中(舌小帯など)を診る。連れて行けない日は様子を伝えればよい
  • 生活のことを聞くのは責めるためではなく、予防策を一緒に考えるため
  • 診察後は「ケアとセルフケアで様子を見る」「医療機関へ」「専門医へ」に分かれる。様子を見る場合も翌日か数日のうちに再確認がある

参照ソース(一次情報)

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🩺 医師監修
本記事は医師が内容を確認しています。一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状が強いとき・改善しないときは医療機関を受診してください。
(情報更新日:2026-09-30)
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