卒乳・断乳の時期は、授乳の回数が変わることで乳房が張ったり、しこりや痛み、乳腺炎につながったりしやすいタイミングです。急に授乳をやめると乳汁がたまりやすいため、多くの場合は少しずつ授乳回数を減らしていく進め方が一般的にすすめられています。ここでは、卒乳・断乳のときの張りや乳腺炎をできるだけ避けるための考え方を、医師監修でやさしくまとめます。
卒乳・断乳とは? まずは言葉の整理から
「卒乳」は、赤ちゃんやお母さんのペースで自然に授乳を終えていくこと、「断乳」は時期を決めて授乳をやめることを指すことが多い言葉です。どちらが良い・悪いというものではなく、ご家庭の状況やお母さんの体調、お仕事の事情などによって選ばれます。大切なのは、どちらの場合も「乳汁が急にたまりすぎない」ように進めることだとされています。
授乳をやめると、母乳をつくる働きは少しずつ落ち着いていきます。ただし、その切り替えには時間がかかるため、急にやめると行き場をなくした乳汁が乳房にたまり、張り・しこり・痛み、ときに乳腺炎につながることがあります。
なぜ急にやめると張りやすいの?
母乳は「飲まれる(出す)ことで、またつくられる」というリズムで分泌が調整されています。授乳や搾乳の回数が急に減ると、つくられた乳汁の出口が減り、乳腺の中に乳汁が滞りやすくなります。この「うっ滞(乳汁がたまって流れにくい状態)」が、張りやしこり、うっ滞性乳腺炎の背景になります。
だからこそ、回数を一気にゼロにするのではなく、体が「つくる量」を少しずつ減らせるように段階的に進めることが、一般的にすすめられています。
少しずつ授乳を減らす進め方(一般的な一例)
以下は、よく紹介される段階的な進め方の一例です。あくまで目安であり、赤ちゃんの様子やお母さんの張り具合をみながら、無理のないペースで調整することが大切とされています。
回数を1回ずつ減らす
まずは日中の授乳を1回減らすなど、少しずつ間隔をあけていきます。数日ようすをみて、張りが強くなければ次へ。
間隔をあけていく
体が慣れてきたら、さらに1回減らします。寝る前や早朝の授乳は最後まで残すと切り替えがゆるやかになりやすいといわれます。
張りを見ながら仕上げる
数週間かけてゆっくり回数を減らし、最後の授乳へ。張りが強い日は無理をせず、後述の「楽にする搾乳」で調整します。
数日〜数週間かけてゆっくり進めるほど、乳房の張りやトラブルは起こりにくいとされています。焦らず、赤ちゃんとお母さんのペースを大切にしてください。授乳・搾乳の基本的なコツは 授乳・搾乳のコツ もあわせてご覧ください。
同じ「張り」でも、産後まもない時期のものは原因も対処も異なります。そちらは産後2〜3日で胸が張って痛いときにまとめています。
張ってつらいときの「楽にする搾乳」の考え方
減らしていく途中で乳房が強く張ったときは、我慢し続けるとうっ滞や乳腺炎につながることがあります。かといってすっきり空になるまで毎回しっかり搾ってしまうと、体が「まだ必要」と判断して分泌が保たれ、なかなか減らないこともあると考えられています。
そのため一般には、次のような考え方が紹介されています。
- 「楽になる程度」まで搾る:完全に空にするのではなく、痛みやパンパンの張りがやわらぐくらいを目安にする。
- 回数・量を少しずつ減らす:張ったら搾る、を繰り返しながら、搾る量と回数を段階的に減らしていく。
- 冷やして休める:張って熱っぽいときは、清潔なタオルなどでやさしく冷やすと楽に感じる方もいます(感じ方には個人差があります)。
- 締めつけすぎない:合わない下着による強い圧迫は避け、ゆったり過ごす。
搾り方の強さや頻度は張り具合によって変わります。加減が難しいとき、しこりが残るときは、母乳外来や助産師に相談すると安心です。ご自宅でのケアは 受診前のセルフケア も参考になります。
卒乳・断乳のあとのケア
授乳をやめたあとも、しばらくは張りを感じたり、少量の乳汁が出たりすることがあります。多くは時間とともに落ち着いていくとされていますが、次のような点に気をつけると安心です。
- 張ったときは無理をせず、楽になる程度に軽く搾って様子をみる。
- しこりが残る場合は、放置せず母乳外来・助産師に相談する。
- やめてから時間がたっても分泌が続く、片側だけしこりが強い、血や膿のような分泌がある、乳房以外の症状(しこりが硬く動かない等)が気になるときは、産婦人科・乳腺外科を受診する。
卒乳後のケアは体調や経過によって異なります。気になることは自己判断で抱え込まず、専門家に相談してください。
受診の目安
🚨 早めに受診したいサイン
- 乳房の一部が赤く腫れて、押すと強く痛む
- 38.5℃以上の発熱・悪寒・関節痛など全身の症状がある
- しこりがどんどん大きくなる/膿や血が混じる
- セルフケアをしても24時間ほどたっても改善しない
- 痛みが強く、日常生活や休息に支障が出ている
これらに当てはまるときは我慢せず、産婦人科・母乳外来・助産院にご相談ください。夜間や休日で判断に迷うときは、地域の救急相談窓口(#7119 など)も活用できます。
急にやめるほど詰まりやすい
断乳・卒乳の時期に乳腺炎が起こりやすいのは、乳汁の産生が急には止まらないためです。授乳を突然やめると、つくられ続けている乳汁の行き場がなくなり、うっ滞が起こります。
そのため、時間をかけて回数を減らしていくほうが、乳腺炎のリスクを下げられます。仕事復帰などで期日が決まっている場合も、可能であれば数週間の余裕をみて少しずつ減らしていくのが安全です。
減らし方の考え方
- 回数を一度に減らさない:1回減らしたら数日間はその回数で様子を見ます
- 張ってつらいときは搾る:ただし搾りきらないことが重要です。空にすると「もっと必要だ」という信号になり、産生が減りません。張りが楽になる程度で止めてください
- 間隔を少しずつ空けていく:搾る量と回数を、日を追って減らしていきます
- 乳房の状態を毎日確認する:硬い部分ができていないか触って確かめます
断乳中に注意したいサイン
- 硬いしこりができて、押すと強く痛む
- 赤み・熱感が出てきた
- 38℃以上の発熱、悪寒、関節痛
- 乳房の一部がぶよぶよと柔らかい
これらが出たら、断乳の途中であっても医療機関に相談してください。「もう授乳をやめるのだから我慢する」という対応が、膿瘍に進む原因になることがあります。
断乳の相談ができる場所
断乳・卒乳の進め方は、助産院や母乳外来で相談できます。乳房の状態を見ながら、その方に合ったペースを一緒に決めてもらえます。「何回に減らせばよいか」「いつ搾ればよいか」は人によって適切な形が違うため、実際に見てもらう価値があります。
発熱や強い痛みが出た場合は、産婦人科・乳腺外科の対象になります。
産後1年以内であれば、区市町村の産後ケア事業も相談先の候補になります。断乳の時期は張りやすく、休息をとりにくい時期でもあります。使える条件は産後ケアは乳腺炎に使える?にまとめました。
気持ちの面について
断乳・卒乳は、体の変化であると同時に気持ちの区切りでもあります。さみしさを感じる方、逆にほっとする方、その両方が入り混じる方——どれも自然な反応です。
ホルモンの変化にともなって、一時的に気分が落ち込みやすくなることもあります。つらい状態が続くときは、我慢せず産婦人科や地域の保健センターに相談してください。
参照ソース(一次情報)
- 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」|授乳期の支援に関する国の指針
- 公益社団法人 日本助産師会|助産師による母乳ケアの一般向け情報
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会|産婦人科領域の一般向け情報