【医師監修】うっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎の違い|経過と対応が分かれるポイント

うっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎の違い|経過と対応が分かれるポイント(母乳ナビ・医師監修)

ひとことで「乳腺炎」といっても、実は経過の異なるいくつかの状態が含まれています。大きく分けると、乳汁が溜まって起こるうっ滞性乳腺炎と、そこに細菌の感染が加わった化膿性乳腺炎です。この二つは対応が分かれる場面があるため、違いを知っておくと受診の判断がしやすくなります。ただし、両者は連続した状態でもあり、ご自身で見分けることを目的としたページではありません。「どこで医療者に相談すべきか」を判断するための材料としてお読みください。

二つの状態のちがい

うっ滞性乳腺炎 化膿性乳腺炎
起こり方 乳汁が乳腺に溜まり、内圧が高まって炎症が起こる うっ滞に細菌感染が加わる。乳頭の傷から菌が入ることが多い
発熱 出ないか、出ても比較的軽いことが多い 38℃以上の発熱、悪寒を伴うことがある
全身のつらさ 乳房の症状が中心 関節痛や倦怠感など、風邪のような全身症状を伴いやすい
乳房の様子 張り、硬いしこり、押すと痛む 赤み・熱感が強く、痛みも強い
基本の対応 乳汁を溜めないこと(授乳・搾乳の継続)と休養 上記に加えて抗菌薬が必要になることがある
放置したとき 化膿性に移行することがある 乳腺膿瘍に進むことがある

表にすると別物のように見えますが、実際にはうっ滞性から化膿性へ移行するという連続した経過をたどることが少なくありません。「今はうっ滞だから大丈夫」ではなく、うっ滞の段階で流れを改善しておくことが化膿性への進行を防ぐと考えてください。

産後2〜3日に両側の乳房全体が張るのは、まだこの2つのどちらでもない乳房緊満のことが多く、対処も変わります。産後2〜3日で胸が張って痛いときもあわせてご覧ください。

なぜ乳汁が溜まるのか

うっ滞の背景には、たいてい生活上の理由があります。

  • 授乳間隔が空いた:外出、来客、上のお子さんの世話、夜にまとまって眠れた日など
  • 赤ちゃんの飲み方が変わった:離乳食が始まった、寝る時間が長くなった、片方を好んで飲むようになった
  • 吸い方が浅い:抱き方や含ませ方によって、特定の部分の乳汁が残りやすくなることがあります
  • 圧迫:きつい下着、抱っこひも、うつ伏せ寝、ショルダーバッグのベルト
  • 疲労・睡眠不足:産後の生活では避けにくい要因ですが、影響します

これらは産後の生活で誰にでも起こることです。心当たりが見つかれば、次に繰り返さないための手がかりになります。

入り口としてまず考えるのは乳頭の傷です。乳頭が痛いときの原因と対処もご覧ください。

細菌感染はどこから来るのか

化膿性乳腺炎では、乳頭にできた小さな傷や亀裂から皮膚の常在菌が乳腺に入り込むことが多いとされています。そのため乳頭の傷は、痛みの問題であると同時に感染の入口でもあるという側面があります。

乳頭が切れている、痛くて授乳がつらいという状態が続いているときは、それ自体を相談する価値があります。含ませ方の調整で改善することが多く、助産師や母乳外来が力を発揮する領域です。

抗菌薬が必要になるのはどんなときか

「乳腺炎=抗菌薬」ではありません。うっ滞が主体の段階では、乳汁を出すことと休養で改善に向かうことが多く、必ずしも抗菌薬を要しません。

一方、次のような状況では抗菌薬が検討されます。

  • 38℃以上の発熱や全身症状を伴う
  • 24時間ほど授乳・搾乳と休養を続けても改善しない、または悪化している
  • 乳頭に明らかな傷があり、そこから感染したと考えられる

判断は診察した医師が行います。授乳を続けながら使える抗菌薬がありますので、「薬を飲むなら授乳をやめなければ」と考えて受診をためらう必要はありません。処方の際は必ず授乳中であることを伝えてください

また、抗菌薬が処方された場合は症状が軽くなっても指示された期間は飲みきることが大切です。途中でやめると再燃しやすく、繰り返しの原因になります。

どちらであっても共通してすること

種類が違っても、土台の対応は同じです。

  • 乳汁を溜めない:痛む側も、できる範囲で授乳・搾乳を続けます。完全に止めると悪化します
  • 休む:横になれる時間をつくることは、治療の一部です
  • 圧迫を避ける:締めつける下着、うつ伏せ寝を避けます
  • 強い自己流マッサージはしない:組織を傷めて悪化させることがあります
👉 具体的な方法はセルフケアのページにまとめています。

その先にある乳腺膿瘍

化膿性乳腺炎が進むと、乳腺の中に膿がたまる乳腺膿瘍になることがあります。こうなると抗菌薬だけでは治まらず、針で膿を抜く(穿刺吸引)切開して排膿するといった処置が必要になります。乳房の一部がぶよぶよと波打つように柔らかい、治療しているのに悪化していく、というときは乳腺外科を受診してください。

どちらのタイプにも当てはまらず、乳房に所見がないまま熱だけが続く場合は、乳房以外の原因を確かめる必要があります。産後の発熱で確かめる4か所を参考にしてください。

受診先の選び方

  • 熱がなく、張りとしこりが中心 → 母乳外来・助産院。授乳の仕方から見直せます
  • 38℃以上の発熱や全身症状がある → 産婦人科。薬の処方が必要になることがあります
  • ぶよぶよした部分がある/繰り返す/治療しても改善しない → 乳腺外科。超音波検査と外科的処置ができます
👉 お住まいの区の施設は東京23区の施設一覧から探せます。各区のページに①産科・婦人科の母乳外来/②乳腺外科/③助産院・母乳相談室/④訪問・出張/⑤区の産後ケアのセクションを設けています。

よくある質問

片方だけ繰り返します。何が違うのでしょうか

いつも同じ側、同じ場所で起こる場合は、その部分の乳汁の流れが滞りやすい理由がある可能性があります。抱き方の癖でその部分に圧がかかっていないか、いつも同じ向きで寝ていないか、下着のワイヤーが当たっていないか——こうした生活の要因が見つかることがあります。一方で、繰り返す場合は他の原因が隠れていることもあるため、何度も同じ場所で起こるときは一度乳腺外科で確認しておくと安心です。

熱がなければ受診しなくてよいですか

熱がないうっ滞の段階でも、痛みが強いときや自分で改善できないときは相談する価値があります。早い段階で授乳の仕方を見直せば、化膿性への進行を防げることが多いためです。「熱が出るまで待つ」必要はありません。

授乳をやめれば治りますか

逆です。授乳をやめると乳汁が溜まり、悪化します。痛くても、できる範囲で授乳や搾乳を続けることが基本の対応です。どうしても患側の授乳が難しいときは、搾乳で乳汁を出す方法を医療者に相談してください。

冷やすべきですか、温めるべきですか

一般には、授乳・搾乳のあとに短時間冷やすと痛みや腫れがやわらぐことがあるとされます。一方、熱いお風呂で長く温めると血流が増えて張りが強くなることがあります。ただし感じ方には個人差があるため、つらくなる方法は続けないでください。

まとめ

  • 乳腺炎にはうっ滞性化膿性があり、連続した経過をとることが多い
  • 共通の土台は乳汁を溜めないこと休むこと
  • 抗菌薬は全例に必要ではないが、発熱・全身症状・24時間で改善しないときに検討される
  • 授乳を続けながら使える薬があるので、受診をためらわない
  • ぶよぶよした部分が出たら乳腺膿瘍を考え、乳腺外科へ

参照ソース(一次情報)

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🩺 医師監修
本記事は救急科専門医が内容を確認しています。一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状が強いとき・改善しないときは医療機関を受診してください。
(情報更新日:2026-08-06)
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