産後の授乳期に多い乳腺炎は、乳腺にたまった母乳(乳汁)がうまく流れず、うっ滞(つまり)を起こすことがきっかけのひとつと考えられています。ここでは、授乳・搾乳のちょっとした工夫や乳房のケアなど、うっ滞をためないための日々のコツを、産後のお母さんに寄り添いながら医師監修でまとめます。がんばりすぎず、できそうなところから取り入れてみてください。
なぜ「うっ滞」を防ぐことが大切なの?
母乳は作られ続けているため、飲み残しや授乳間隔のあきすぎなどで乳房に乳汁がたまると、乳腺の流れが滞りやすくなります。このうっ滞が続くと、乳房の張り・しこり・痛みにつながり、そこから乳腺炎に進むことがあるとされています。そのため、日々のケアでは「乳汁を必要以上にためこまず、こまめに流す」ことが一般に大切だと考えられています。
とはいえ、完璧を目指す必要はありません。赤ちゃんのリズムやお母さんの体調に合わせて、無理のない範囲で続けられることが何よりです。
飲ませ方のコツ:深くくわえてもらう
赤ちゃんが乳頭だけを浅くくわえていると、母乳が飲み取りにくく、乳頭に傷もできやすくなります。一般に、次のような深いくわえ方(ラッチオン)が勧められています。
- 赤ちゃんの口を大きく開けさせ、乳輪の下側まで深くふくませる。
- 赤ちゃんのお腹とお母さんのお腹が向かい合う(体がねじれない)ようにする。
- あごが乳房に触れ、下唇が外向きに開いている状態が目安。
- 飲むときにチクチク・ズキズキと強く痛む場合は、いったん外して深くくわえ直す。
うまくいかないときは、母乳外来や助産師さんに一度みてもらうと、姿勢やくわえ方のコツがつかみやすくなります。
授乳姿勢を時々変えてみる
いつも同じ抱き方だと、飲み取られにくい部分が出てくることがあります。抱き方を変えると赤ちゃんの下あご側がよく飲み取るため、乳房のいろいろな方向をまんべんなく飲んでもらいやすいとされています。
- 横抱き:もっとも基本的な抱き方。
- フットボール抱き(脇抱き):赤ちゃんを脇に抱える。乳房の外側〜下側が張りやすいときに。
- 添い乳(横になって授乳):夜間や疲れているときに。落下やお母さんの寝込みに注意し、無理のない範囲で。
「張りを感じる方向に赤ちゃんの下あごを向ける」と、その部分が飲み取られやすいと言われています。
授乳・搾乳の頻度:ためこまない
乳汁をためこまないためには、赤ちゃんが欲しがるタイミングでこまめに授乳することが一般に勧められます。時間を厳密に区切るより、赤ちゃんのサインに合わせる方が、うっ滞を防ぎやすいと考えられています。
- 授乳間隔があきすぎて張りが強いときは、片方に片寄らず両方の乳房を飲んでもらう。
- 赤ちゃんが途中で寝てしまい飲み残しがあるとき・外出などで授乳できないときは、張りがつらくならない程度に搾乳して楽にする。
- 搾乳は「空にするまで」ではなく張りがやわらぐ程度にとどめるのが目安。搾りすぎると母乳が作られすぎて、かえって張りやすくなることがあるとされています。
- 卒乳・断乳などで授乳回数を減らすときは、急に止めず少しずつ減らしていくと乳房に負担がかかりにくいと言われています。
乳房と乳頭をやさしくケアする
乳頭に傷や亀裂があると、そこから細菌が入って化膿性乳腺炎につながることがあるとされています。乳頭・乳房はやさしくいたわりましょう。
- 授乳後は乳頭を清潔にし、こすりすぎずやさしく扱う。ゴシゴシ洗いは避ける。
- 乳頭に強い痛みや傷が続くときは、我慢せず母乳外来・助産院に相談する。
- 締めつけの強い下着や、うつ伏せ寝で乳房を長時間圧迫すると、部分的にうっ滞しやすくなることがあるため、ゆったりめの下着を選ぶとよいとされています。
- 水分・食事・休息をとり、疲れをためすぎないことも、体調を保つうえで一般に大切です。
こんなときは早めに相談を
🚨 セルフケアより受診を優先したいサイン
- 乳房の一部が赤く腫れて強く痛み、38.5℃以上の発熱・悪寒・関節痛などの全身症状がある
- 張りやしこりが24時間ケアしても改善しない/どんどん大きくなる
- 乳頭の傷が悪化する・膿や血が混じる
- 授乳を続けるのがつらいほど痛む
これらに当てはまるときは、無理をせず産婦人科・母乳外来・助産院にご相談ください。夜間や休日で迷うときは、地域の救急相談窓口(#7119 など)も活用できます。
毎日の授乳のなかで、すべてを完璧にこなす必要はありません。「疲れたら休む」「困ったら専門家に頼る」ことも、大切なケアのひとつです。あなたと赤ちゃんのペースを大切にしてくださいね。
👉 電話する前に伝えること(チェックリスト)