乳房が張って痛い、熱っぽい——そんなとき、「どこに行けばいいの?」で迷う方はとても多いです。産婦人科・母乳外来・助産院・乳腺外科には、それぞれ得意な役割があります。しかも乳腺炎は一つの窓口ですべてが完結しにくいという特徴があります。症状の段階ごとに、どこを選べばよいかをまとめます。
4つの受診先と、その役割
| 受診先 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 母乳外来 | 授乳姿勢の調整、乳房のケア、授乳の続け方の相談。病院に併設され医師につなぎやすい | 単独では薬の処方・画像検査は行わない |
| 助産院・母乳相談室 | じっくり時間をかけた母乳ケア、授乳相談 | 薬の処方、画像検査、外科的処置 |
| 産婦人科・産科 | 診察、薬の処方、経過の管理 | 膿瘍の外科的処置は乳腺外科へ紹介となることがある |
| 乳腺外科 | 超音波検査、穿刺吸引・切開排膿、他の乳腺疾患との鑑別 | 授乳姿勢の指導などのケアは専門外のことがある |
この表からわかるのは、ケアの専門家と、医療処置の専門家が別にいるということです。夜間に救急で薬をもらい、翌日に母乳外来でケアを受ける、あるいは母乳外来から乳腺外科へ紹介される——こうした組み合わせは二度手間ではなく、それぞれの役割にかなった動き方です。
症状の段階で選ぶ
張り・しこりが中心で、熱はない
→ 母乳外来・助産院。授乳の仕方から見直せます。この段階で相談できると、悪化を防げることが多くあります。
38℃以上の発熱、全身のだるさがある
→ 産婦人科・産科。診察のうえ、必要なら抗菌薬などが処方されます。授乳を続けながら使える薬がありますので、「薬を飲むなら授乳をやめなければ」と考えて受診をためらう必要はありません。
ぶよぶよした部分がある/治療しても改善しない/繰り返す
→ 乳腺外科・ブレストクリニック。超音波検査で膿がたまっていないかを確認し、必要なら穿刺吸引や切開排膿を行います。また、乳腺炎に見えて別の病変が隠れていないかを確かめる場でもあります。
夜間・休日で判断に迷う
→ まず♯7119(救急相談センター)に電話してください。受診の要否を一緒に判断してもらえます。
🚨 早めに医療機関へ相談したいサイン
- 38℃以上の発熱・悪寒・関節痛などの全身症状がある
- 乳房の強い赤み・腫れ・激しい痛みがある
- セルフケアをしても24時間たっても改善しない
- 膿や血が混じる/しこりがどんどん大きくなる
- 乳房の一部がぶよぶよと波打つように柔らかい
乳腺外科は「乳がんの科」ではないのか
乳腺外科というと乳がん検診の場という印象があり、授乳中のトラブルで行ってよいのか迷う方が多くいます。
しかし乳腺炎は文字どおり乳腺の炎症であり、化膿性乳腺炎や乳腺膿瘍で超音波検査や切開排膿を行うのは乳腺外科です。公式サイトに「乳腺炎」「乳腺膿瘍」「授乳期のトラブル」への対応を明記している施設も多くあります。
一方で、授乳期の乳腺炎は産婦人科へ、と案内している乳腺外科もあります。どちらの方針かは施設によって異なるため、「授乳中の乳腺炎ですが診てもらえますか」と電話で確認してください。
本サイトの各区ページでは、公式情報で乳腺炎・乳腺膿瘍への対応を確認できた施設を②乳腺外科・ブレストクリニックのセクションにまとめています。
自治体の産後ケア事業について
多くの自治体が、産後の心身のケアや授乳の相談を受けられる産後ケア事業を実施しています。費用の補助があるため、選択肢として知っておく価値があります。
ただし注意点があります。自治体によっては「乳腺炎など治療を要する状態は利用対象外」「乳房マッサージのみの対応はしていない」と明記しているところがあります。つまり産後ケア事業が乳腺炎の受け皿になるとは限りません。発熱や強い痛みがあるときは、医療機関を選んでください。
本サイトの各区ページには⑤区の産後ケア事業のセクションを設け、その区の扱いがわかる場合は明記しています。どこまでが産後ケアの範囲で、どこからが医療機関の役割なのかは、国のガイドラインに「除外となる者」としてはっきり書かれています。産後ケアは乳腺炎に使える?で条文とあわせて整理しました。
「当院で出産した方のみ」に注意
産婦人科や母乳外来の中には、自院で出産した方を対象としているところがあります。里帰り出産や引っ越しで出産施設と今の住まいが離れている場合、はじめての施設では受診の条件が異なることがあります。
「他院で出産しましたが受診できますか」を、電話の最初に確認してください。本サイトの施設カードでも、当院出産者向けと確認できた施設にはその旨を記載しています。
母乳外来と助産院は何がちがうのか
どちらも母乳ケアに詳しい点は共通していますが、医療との近さに違いがあります。
母乳外来は病院やクリニックに併設されていることが多く、発熱や薬が必要になったときに院内で医師につなぎやすいのが強みです。「熱が出るかもしれない」という段階では、こちらのほうが安心なことがあります。
一方、助産院や母乳相談室は、母乳ケアそのものに時間をかけてくれる施設が多く、授乳の姿勢や含ませ方をじっくり見てもらえます。「授乳がうまくいかない」「同じ場所が何度も詰まる」といった相談に向いています。
選ぶ目安を一つ挙げるなら、「発熱があるかどうか」です。熱があるなら医療機関、熱がなく授乳の悩みが中心なら助産院・母乳外来、という分け方ができます。
訪問・出張という選択肢
発熱して動けない、赤ちゃんを連れての外出が難しい、上の子がいて出られない——そうした状況で、自宅に来てもらうという方法があります。
助産師が自宅を訪問して母乳ケアを行うサービスで、本サイトの各区ページでは④訪問・出張のセクションにまとめています。区外から訪問している助産師もいるため、お住まいの区のページに載っていなくても、隣接区のページを確認する価値があります。
ただし、訪問で行えるのは母乳ケアであり、薬の処方や画像検査、外科的処置はできません。発熱が強いときや膿瘍が疑われるときは、無理をせず医療機関へ向かってください。
迷ったときの考え方
どこに行くべきか判断がつかないとき、次の順で考えると整理できます。
- まず、急ぐ状態かどうか:高熱、ぐったりする、ぶよぶよした部分がある → すぐ医療機関、または♯7119
- 次に、熱があるかどうか:熱あり → 産婦人科/熱なし → 母乳外来・助産院
- そして、経過はどうか:治療しても改善しない、繰り返す → 乳腺外科
- それでも迷うなら:電話で症状を伝えて、案内してもらう。「うちでは対応できません」と言われたら、どこへ行けばよいかも聞いてください
最後の一言が大切です。断られたときに「ではどちらに相談すればよいでしょうか」と尋ねると、地域の事情を知っている相手から具体的な行き先を教えてもらえることがあります。
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各区のページは①産科・婦人科の母乳外来/②乳腺外科・ブレストクリニック/③助産院・母乳相談室/④訪問・出張/⑤区の産後ケア事業のセクションに分かれています。
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すべての施設情報は各施設の公式サイト等の公開情報にもとづくもので、対応を保証するものではありません。出典URLと最終確認日を明記していますが、受診前には必ずお電話でご確認ください。
参照ソース(一次情報)
- 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」|授乳期の支援に関する国の指針
- 厚生労働省「母子保健施策(産後ケア事業)」|産後ケア事業の制度概要
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会|産婦人科領域の一般向け情報
- 公益社団法人 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」|乳腺疾患に関する学会の一般向け解説
- 東京消防庁「救急相談センター(♯7119)」|夜間・休日の受診相談窓口